白象の気まぐれコラム

アクセスカウンタ

zoom RSS イトマン事件を巡る内部抗争を元行員が暴露した国重惇史著「住友銀行秘史」を読み驚く

<<   作成日時 : 2016/12/22 10:01   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 0

画像
戦後最大の不正経理事件といわれたイトマンをめぐる住友銀行の内部抗争を 関係者の実名を挙げて克明に書いた国重惇史著「住友銀行秘史」を読みました。 上掲の図は 著者によるイトマン事件関係略図(クリックして拡大視可)で 登場人物の関係が良く分ります。

著者・国重惇史氏は 1968年 東京大学経済学部を卒業し住友銀行に入社 2年間の米国大学院留学を経て 企画部のMOF坦(大蔵省担当)として活躍 渋谷東口支店長として実績を挙げ 1988年 本店に戻り業務渉外部の部付部長となっています。 

住友銀行に入社以来 常に光の当たる道を歩き第一選抜で昇進してきたエリート社員の著者は バブル景気に陰りの出始めた1990年になって 伊藤寿永光 許永中といった闇の勢力により住友銀行が食い物にされていると直感し 住友銀行を救うために行動を開始すると同時に縦長の手帳に毎日の行動をメモに残しています。

当時の住友銀行は 天皇と呼ばれた磯田一郎氏が会長で 磯田体制で色々な悪弊が表れつつあり その象徴がイトマン事件でした。 イトマンは住友銀行をメインバンクとする中堅商社で 住友銀行から送り込まれ磯田会長から絶対的な信頼を得ていた河村良彦氏がワンマン社長として権力を握っていました。 当時のイトマンで最大の問題は 多角化という名目で拡大した事業の多くが頓挫し始めていたことで 河村社長がのめり込んでいた不動産事業が住友銀行から1兆2千億円もの借金をして不良資産となり経営を圧迫していました。 河村社長は不動産事業の失敗を糊塗しようとして 伊藤寿永光 許永中といった闇の勢力に接近したことから 住友銀行が食い物にされ 住銀からの融資が闇社会に3000億円ほど流れて消えていました。

このことに危機感を持った著者は 1990年5月にイトマン内部の協力者からイトマンの便箋と封筒を大量に入手して最初の告発状を 大蔵省銀行局長・土田正顕氏宛に差出人をイトマン従業員一同として送付しました。 住友銀行の融資でイトマンが不動産に投資した1兆2千億円の半分相当が利益を生まない不良資産となっており このままでは大変なことになるという窮状を訴えた内部告発で 大蔵省当局の行動を促したものです。 同時に 著者は日本経済新聞の記者・大塚将司氏の協力を得て告発状の内容を記事にして貰うと共に 取材した土田局長 磯田会長 河村社長の反応を記事にして貰っています。

告発状はその後も内容を変えて何度も大蔵省当局や日銀当局やメディア各社に送られ その結果 「イトマン事件」として世間の注目を集め 段々と追い込まれた磯田会長は1990年10月に辞任し イトマンの河村社長は1991年1月に電撃解任され その後 河村社長と許永中と伊東寿永光は商法の特別背任罪で逮捕されています。 この事件による住友銀行の損失は約5000億円とされています。

住友銀行とイトマンの内部情報をリークしイトマンに絡む数々の不正を明るみに出したのは誰なのか 今まで謎でしたが 「レター」と題する内部告発状を書き大蔵省当局やマスコミ各社に流したのは著者自身で 日本経済新聞記者・大塚将司氏の協力を得たことを 本著「住友銀行秘史」で初めて明らかにしています。

本著では 住友銀行内や関係者とのやりとりが実名で70人以上も登場しており イトマン事件の真相を銀行側からの証言で綴ったノンフィクション小説として貴重であり 読み応えがありました。

著者の自信あふれる行動力と策士としてのずば抜けた能力に驚きますが そのことについて 著者は次の如く書いています(P294)。

私は銀行を変えたいと思って情報を集め工作した。 少し格好をつけて言えば 自分には信念があり正義を貫こうとしていた。 私は 自分に絶対の自信があり 自惚れかも知れないが 能力があると思っていたので 自分の信念を貫きたかった。 勿論 自分が陰で動いていることがばれれば 会社から排除され私のサラリーマン生活は終わるが それも一つの生き方だ。 だから 私は誰に命じられるでもなく 誰に言うでもなく 一人で動いた。 住友銀行のため 愛社精神というよりも 自負心 プライドの問題だった。

住友銀行やイトマンの機密資料を勝手に内緒で外部にリークした著者の行動は 通常の内部告発として許される範囲を超えており 常識的な?サラリーマンであった私の理解を超えるものですが 上記に引用した著者の独白を読み 大胆で非常識とも言える行動を起こした著者の気持ちを少し理解できました。

著者は将来の有力な頭取候補と言われたそうですが イトマン事件後 1994年に取締役にはなるものの 社内で危険人物とみなされるようになり 住友銀行の中枢から外され 2005年に住友銀行を退職し楽天副社長に就任しています。

2014年4月 楽天副会長時に「人妻を妊娠させた楽天・国重副会長」と題する記事が証拠写真と共に週刊新潮に掲載され 国重氏は一身上の都合として辞任しています。 著者の積極的な行動力は 男性だけでなく人妻に対しても抜群だったようです。

尚 文芸春秋12月号に「住友銀行秘史の舞台裏を明かす」と題する国重惇史氏と大塚将司氏の対談が載っており 一読に値します。

「住友銀行秘史」の著者・国重氏に対する旧住友銀行OBの反応がどんなものなのか 分かりませんが 恐らく住友銀行を救った英雄というより行員として許されぬ背徳漢という評価の方が圧倒的に多いのではないでしょうか? 大学の専門課程で一緒だったT君が 一時期 住友銀行の取締役だったので 来年の同期会で聞いてみるつもりです,
画像

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
イトマン事件を巡る内部抗争を元行員が暴露した国重惇史著「住友銀行秘史」を読み驚く 白象の気まぐれコラム/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる