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zoom RSS 「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが高倉健から学んだ“17秒の沈黙”とは?

<<   作成日時 : 2017/06/29 06:38   >>

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国谷裕子著「キャスターという仕事」(岩波新書)を読みました。 著者は 小学校の数年を除き海外の大学やインターナショナルスクールで過ごしたので 英語には堪能ですが 日本についてきちんと理解できていなかったので 1993年4月にNHKの報道番組「クローズアップ現代」のキャスターとして起用された際に そのことがコンプレックスになっていたそうです。

そんな著者が2016年3月に降板するまで23年も人気と実力を兼ね備えたキャスターとして務めることが出来たのは ニュースを「分かりやすくして伝える」だけでなく 一見「分かりやすいこと」の裏側に潜む複雑さや課題の重要性について視聴者に提示したからです。

昨今のジャーナリズムの現場は「空気を読む」という日本独特の事なかれ主義が蔓延し 手厳しい正論を避ける傾向がありますが 日本のことをきちんと理解できていなかった著者は そのことが逆に強みになり 「空気を読む」という事なかれ主義に流されない骨のある個性的なキャスターとして手厳しい正論を展開できたようです。

しかし そのことが敵を作ることにもなり 2014年7月に放送した集団的自衛権に関する菅官房長官へのインタビューでは 「聞くべきことはきちんと聞き 答えを得られるまで繰り返して聞く」という著者独特の鋭い切り込み方が首相官邸から不評を買い 番組から降板させられることになったようです。 著者は不本意ながら降板させられた原因について あいまいにしていますが この本からそのように読み取れます。

その一方で 「聞くべきことは答えを得られるまで繰り返して聞く」ということをしなかったことで大成功した例として 著者は高倉健へのインタビューを挙げています。

2001年5月に放送した「高倉健 素顔のメッセージ」という番組で いま どのような思いで映画俳優という仕事に向き合っているかを聞くためにインタビューをした著者は 短くそっけない答えが返ってくるだけの高倉健と対話がまったく弾まず困ったそうです。 話が途切れても待つと覚悟を決めた著者は 質問を繰り出さずに待ったところ 17秒の沈黙後に高倉健はようやく次の如く語り始めたそうです。

高倉: 休みをとって世界中どこへでも行きたいと思えば行けて いいホテルに泊まって いいレストランで飯を食って メニューの値段表を見なくても飯が食えるようにいつのまにかなってしまった。 乗る飛行機はファーストクラス 泊まるホテルはスイートって なんか自然のようになってますけど・・・(沈黙)。 やっぱりこの仕事やってきてよかったと思えることは そういうことではなくて 鳥肌が立つような感動をした時ですね。 あ よかったなって 自分で。
国谷: これからどういう作品に出たいと思いますか。
高倉: まだ 頭の中 なんにも考えていないですね。 もう嫌でも封切りの日が来ますから。 その日が一番辛くなる日なんですけど。 でもどっかでいい風に吹かれていたいという風に思いますね。
国谷: いい風に吹かれたい。
高倉: はい いい風に吹かれていたいですね。 あんまりきつい風に吹かれていると 人にやさしくなれないですね。 だからいい風に吹かれるためには 自分が意識していい風が吹きそうな所へ自分の体と心を持って行かないと。 じっと待っていても吹いてきませんから。 吹いてこないというのが この頃わかってきましたね。

高倉健の人柄が良く出た素晴らしいインタビューと思います。 17秒の沈黙は 放送事故と誤解される恐れもありますが 著者は 高倉健にとって17秒は自分の話すべき言葉を探す重要な時間と考え 質問を繰り出さずに辛抱して待ったそうです。 

著者はこのインタビューで「待つこと」の大切さを学んだと語っています。 この話には“オチ”があり 番組を観た高倉健から後日「あの17秒をそのまま放送で残してくれて有難う」というメッセージが届いたそうです。

23年間続いた「クローズアップ現代」が終了して寂しいですが 暫く休養と充電の期間として 稀代のキャスター国谷裕子さんが次にどのような番組で登場するのか 期待して待ちたく思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
7時のニュースの後の「クローズアップ現代」が無くなったのが今でも残念です。
一筋縄ではいかないインタビューの難しさを、本書から教えられました。
「空気を読む」傾向は、報道の現場で危機的なほど蔓延してているようです。

2017/07/01 23:58
空さま
コメントを有難うございます。
白象
2017/09/18 14:17

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