絵を見た人も無言になる戦没画学生慰霊美術館「無言館」を訪ねて

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王ヶ頭ホテルに1泊した翌日は 上田市に向う途中で 念願だった「無言館」(写真上)を見学しました。 無言館には 第二次世界大戦中に志半ばで戦場に散った画学生たちが残した絵画・作品・愛用品などが収蔵・展示されています。

無言館館主の窪島誠一郎(1941年生)は小説家・水上勉の実子(旧民法上の私生児)としてもよく知られており 詳しくは私のブログ別記事  「無言館」館主・窪島誠一郎が2歳の時に生き別れた父を探し作家・水上勉と知るまでを書いた「父への手紙」  を参照ください。

ここで本題に入る前にチョット脱線しますが 新明解国語辞典によると 親と子の関係を示す言葉として 次の如く説明されています。

   嫡出子: 正妻が産んだ子。 嫡子とも言う。
   庶子:  嫡出でない子。 正式の夫婦でない男女の間に生まれた子。 
         旧民法では父が自分の子として認めた私生子(妾の子など)。
   私生子: 現民法での「嫡出でない子」。
   実子:   自然の血縁のある子。 養子に対する語。 
          嫡出子と嫡出でない子(私生子)の別がある。

なかなか分かり難いのですが 窪島誠一郎は 水上勉の「認知していない嫡出でない妾の子でもない実子」と私は理解しました。 簡単に言えば「私生子」なのですが 私生子・庶子という呼び方は 既に死語となっているようです。 「嫡出でない実子=私生子」は 認知しているかどうかで相続権の有無に差が生じます。 

で 本題に戻ります。 戦没画学生の遺作を集めて「無言館」を建設することになったきっかけは 昭和52年(1977年)にNHKから出版された「祈りの画集」を窪島誠一郎が読んだことにあります。 NHKテレビで 画家・野見山暁治(1920年生)が戦没画学生の家を尋ね歩くという番組”祈りの画集”が放送され そのことを記録した”祈りの画集”の執筆者・野見山暁治に窪島誠一郎が会った時に 野見山暁治から「いつか戦没画学生の絵を集めて展示する施設をつくりたい」という話を聞き 賛同した窪島誠一郎が「無言館」を建設することになったものです。

野見山暁治は 昭和17年に東京美術学校(現東京芸術大学)を繰り上げ卒業して満州に出征したもの 肋膜を患い陸軍病院に入院し生き残りますが 多くの美校仲間が戦場で死んだことを悼み 生前の絵を集めて展示する施設を作りたいという思いに至ったものです。

窪島誠一郎は その著書「無言館 戦没画学生“祈りの絵”」の中で その辺のいきさつについて 次のように書いています。 

野見山先生には黙っていたけれども、先生の亡き画友への鎮魂録「祈りの画集」にうたれて「無言館」建設を思い立った私の心奥には、戦争にとことん苦しめられ、口にいえぬ辛酸をなめながら貰い子の私を慈育し、報われぬまゝ先年この世を去った両親への憐れみがあったと思う。憐れみというのも甘い言い回しだけれども、私は死んでいった画学生のどの絵にも、あふれるような存命の歓びと肉親への感謝を発見して瞼がぬれたのだった。親が生きているうち、何一つ孝行せず、すべてを子の手柄のように考えてきた自分の姿をふりかえってやるせなかった。同時に、父や母の背後にあった「戦争」をも一顧だにしようとしなかった自分がなさけなかった。全国をめぐって戦没画学生の遺作を集めることは、そんな私自身の五十数年にわたる思いあがりの暦を、もう一度みつめ直すきっかけになるのではなかろうか

私のブログ記事  「無言館」館主・窪島誠一郎が2歳の時に生き別れた父を探し作家・水上勉と知るまでを書いた「父への手紙」 の中で 私は次のように書きました。 

窪島誠一郎は 実父・水上勉との交流を深める一方で 実母のことは決して理解しようとせず冷遇し 大恩ある養父母を毛嫌いし口をきくことさえ避けたので 批判もあるようですが 同年代の私としては その屈折した気持ちを何となく分かる気がしました。

生母と養父母を存命中に冷遇したことは 窪島誠一郎が上記文章(青字の太字部分)の如く正直に認めているので 事実だったようです。 しかし そのことを悔いたことが「無言館」を建設する心底にあったというのは 私にとって新発見であり 驚きでもありました。

無言館に展示されている絵は 勉強中の画学生の作品であり 専門家から見れば未熟・稚拙なものもあるようですが 『あの時代』に若き画学生たちがどんな気持ちで絵を描いていたのか どの絵も見る人たちに無言で訴えており 私も絵を見て無言となりました。
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無言館の正面入口

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正面左から見た無言館

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正面右から見た無言館。 建物全体は上から見ると十字形に造られている

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無言館の裏。 奥に見えるのが「時の庫(ときのくら)」で戦没画学生の作品を保存・修復する施設

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「時の庫」のレンガに刻まれた「無言館」建設に賛同した寄付者名

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この記事へのコメント

おのま@カナダ
2009年11月20日 04:01
無言館の記事を本日当方のブログ(木霊の宿る町 
http://onomar.jugem.jp/)に引用したのでお知らせします。TBを試みましたが失敗しました。
白象
2009年11月20日 07:40
おのま@カナダさま
私のブログを引用いただき有難うございます。 貴ブログを楽しく読ませていただきました。

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