マイケル・サンデル教授にとって「正義」とは結局のところ何なのか?

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ハーバード大学で最も人気のある講義をベースに書きベストセラーとなっている写真上のマイケル・サンデル著「『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』(早川書房)を読みました。 英語版のタイトル"Justice: What's the Right Thing to Do?" を直訳すれば「正義: 正しい行いとは何か?」となります。 

この本は難解な哲学の話を分かり易く説明しているという評判ですが 「正しい行いとは何か?」についてサンデル教授自身の答は何なのか 単細胞の私には本を読んでみてとても分かり難い内容だったので サンデル教授の言う要点を私なりに以下の如くまとめてみました。

1.何が正しい行いなのか(正義とは何か)を考える際に 三つの理念に基づく
  アプローチがある。 それは 「最大多数の最大幸福」 「選択する自由の
  尊重」「美徳と共通善の判断」である。
2.これら三つのアプローチは それぞれに「強み」と「弱み」を持つので 
  これらの理念同士が衝突する場合に何が正しいかについて意見の対立が
  生じる。
3.こうした意見の対立を政治哲学で一致させることは出来ないが 議論を
  進めることにより 民主的市民として我々が直面するさまざまな選択肢の
  道徳的意味をはっきりさせることが出来る。
4.私(サンデル教授)自身は第3の「美徳と共通善の判断」を支持している。
  「最大多数の最大幸福」の欠点は正義と権利を原理ではなく計算の対象
  としていることだ。 「選択する自由の尊重」の欠点は人間のあらゆる善を
  一つの統一した価値基準にあてはめ個々の質的な違いについて
  考慮しないことだ。
5.公正な社会には 何が善良か(美徳か)の判断とコミュニティー全体への
  配慮(=共通善に対する献身)が大切である。 
6.公正な社会が善良な生活についてともに判断することで成り立つとすれば
  我々をこのような方向に向わせるのはどんな種類の政治的言説かという
  問いが残るが 私(サンデル教授)自身はこの問いにまだ満足のいく答え
  を出せないままにいる。 何が善良で何が共通善かを判断できる一つの
  原理を発見できれば 善良な生活をめぐる議論で生じる混乱や争いを避け
  られるが そうした原理は存在しない。 公正な社会を達成するために 
  我々は何が善良で何が共通善かを共に考え受け入れられる社会をつくり
  ださなければならない。


本の最後に「共通善」という言葉が唐突に出てくるので 上記の如く私なりに整理するのに苦労しました。 うまく整理できたか 余り自信ありませんが 日本語版の本の帯にある宮台真司氏の解説より分かり易いのではないでしょうか?

で このブログ記事のタイトル『マイケル・サンデル教授にとって「正義」とは結局のところ何なの?』の答ですが それは上記6の如く サンデル教授自身が「満足のいく答え出せないままにいる」と正直に答えています。

サンデル教授の講義は 学生との討論を交え学生に色々と考えさせる点では意味のあるものですが サンデル教授自身が解を持たない答のない問題について議論させているので 私には物足りません。

こうした物足りなさについて 8月26日(土)夜に放送されたNHKテレビ番組「きょうの世界」では キャスターの市瀬卓氏がサンデル教授にインタビューし 教授自身が解を示さない色々な問題について鋭く追及しており その感想を私の過去記事  「ハーバード白熱教室」サンデル教授に原爆投下の正当性を問い質したNHKキャスター市瀬卓氏の力量はA+  に書きましたので 併せてご覧いただけると幸いです。

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この記事へのコメント

hms
2010年10月05日 14:45
正義とは何か。 それは古来よりさまざまな場所で議論されてきた。
 ・正義なんて滑稽だ。山のこちら側では真実でも、向こう側では誤りなのだ。パスカル
 ・正義も理屈さえつけさえすれば、敵にも味方にもなるものである。芥川龍之介
白象
2010年10月05日 15:08
hmsさま
コメントに引用されたパスカルや芥川龍之介の言葉は至言ですね。

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