国立西洋美術館開館60周年記念「松方幸次郎の松方コレクション展」を観て想う

kojirou1.jpg国立西洋美術館開館60周年記念「松方コレクション展」は9月23日まで開催されるので 長梅雨が終わった頃にと思ってたところ 7月14日(日)のNHKテレビ「日曜美術館」で紹介された後は混むことが予想されると教えられたので 慌てて7月11日(木)に観ました。

1959年に開館した国立西洋美術館は 「松方コレクション」の375点が核になったもので 通常は常設展示されていますが 今回は開館60周年記念の企画展(特別展)として国立西洋美術館が所蔵していないパリのオルセー美術館所蔵のゴッホ「アルルの寝室」などを含む松方コレクション旧蔵品も展示されており とても見応えがありました。

「松方コレクション」は 神戸の川崎造船所(現川崎重工)を率いた松方幸次郎(1866~1950年)が第一次大戦による船舶需要を背景に事業を拡大し ロンドン・パリなどで西洋の絵画を含む約3000点の美術品を買い集めたものです。 本格的な西洋美術に触れることができなかった日本人のために 上質の美術作品を日本に紹介したいと考え 第一次世界大戦中の1916年から1927年までの11年間 に多くの美術品を 私財を投じて収集し 西洋美術を専門とする公共の美術館(構想に終わった共楽美術館)を日本で設立するという高邁な目標を持って集められました。 しかし その後の激動の歴史の中で多くは散逸し 国立西洋美術館が所蔵する松方コレクションの375点は 敵国財産としてフランス政府が接収したものを第二次大戦後になって収納する美術館を日本で新設する条件で返還され 国立西洋美術館の設立となりました。

松方幸次郎は絵画を選別する審美眼を必ずしも持ち合わせていないと自称しており 幸次郎が初めて買った絵の作者で親交を深めたイギリスの有名画家フランク・ブラングィン(1867~1956年)を信頼できるアドバイザーにしています。 美術館建設を夢見ながら一大コレクションの散逸を不況や火災や戦争で防ぐことができなかった松方幸次郎は無念だったと思います。 上掲の絵は 1916年にブラングィンが描いた「松方幸次郎の肖像」です。 くつろいでパイプをくゆらす姿の肖像(当時50歳)から おおらかで欧米人相手にも物おじしない人柄がにじみでており 松方幸次郎とブラングィンの信頼と友情を感じさせる画になっています。

「ノーブレス・オブリージュ」という言葉があります。 財産 権力 社会的地位の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという欧米社会における基本的な道徳観を意味します。 松方幸次郎は日本人でありながら「noblesse oblige」を自ら実践したのではないでしょうか?

ちなみに松方幸次郎は 薩摩藩士にして明治の元勲・松方正義(1835~1924年)の3男、日本山岳会ヒマラヤ登山隊長などを務めた松方三郎は 正義の13男、ライシャワー元駐日大使夫人・松方ハルの父・松方正熊は 正義の8男です。

私は今から半世紀ほど前に米国トヨタN.Y .事務所の上司だった三郎の次男・松方富士雄氏と幸次郎の孫娘・恭子さん(富士雄氏夫人)に公私とも大変お世話になりました。 10年ほど前に 自動車リサイクルの仕事で 江戸時代に薩摩の支配下だった奄美大島を訪ね 藩の役人をもてなす為に用意されたという郷土料理「鶏飯」を食べた時に ニューヨークの松方夫妻のご自宅で恭子さんの手料理としてご馳走になったことを唐突に思い出しました。
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(ジヴェルニーでのクロード・モネと松方幸次郎)

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(松方コレクションが旧蔵したオルセー美術館所蔵のゴッホ「アルルの寝室」)

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この記事へのコメント

2019年09月17日 18:26
白象さん、こんにちは。
空もようやく「松方コレクション展」を観てきました。
常設でいつでも観られらから、とあまり注目していなかったのですが、コレクション成立の経緯にも触れており、興味深い特別展でした。
特にオルセーより貸し出された「アルルの寝室」を観ることができてよかったです。
しかし、松方の買いっぷりは、当時の「瀑買い」ですね。
白象
2019年09月17日 20:26
空さま
コメントを有難うございます。 空さんのブログはコメント書き込みを拒否しているようですね。