カンヌ国際映画祭パルムドール賞の「わたしは、ダニエル・ブレイク」を含むケン・ローチ監督の旧作映画4本を観る

danierl1.jpg現在公開中の映画「家族を想うとき」の感想を私のブログ(赤字部分をクリックして参照)に載せた際に 同じケン・ローチ監督が制作した他の英国映画も観たいと思い 2016年のカンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞した「わたしは、ダニエル・ブレイク」を含む旧作4本のDVDをTSUTAYAで借り観ました。

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」は 心臓の病で医者から大工の仕事を止められ失職した59歳のダニエルが 国の援助を求めて手続きを進めようとしても 余りにもややこしい制度に阻まれ途方に暮れるという内容です。

この映画は 英国の福祉制度と貧困の問題を余すことなく描いており 英国民だけでなく日本人の心にも強い共感を与えます。 底辺にて働く貧しい人たちが苦しい生活を強いられていながら国からの支援をなかなか得られない実態について ケン・ローチ監督は怒りを持って描いています。 映画のハイライトは 職安での手続き中に心臓発作で死んだダニエルが自宅に残した"I, Daniel Blake, am a citizen, nothing more and nothing less."という国に訴えかけるメッセージで 映画の原題「I, Daniel Blake」になっています。 長いメッセージなので その一部分のみ引用すると以下です。

I am not a shirker, a scrounger, a beggar, nor a thief. I paid my dues, never a penny short, and proud to do so. I don't accept or seek charity. My name is Daniel Blake. I am a man, not a dog. As such, I demand my rights. I demand you treat me with respect. I, Daniel Blake, am a citizen, nothing more and nothing less.
私は怠け者ではない。たかり屋でもなければ物乞いでも泥棒でもない。 私は一銭の不足もなく 払うべきものは払ってきた。そのことに誇りを持っている。私は施しは受けないし求めようとも思わない。私の名前はダニエル・ブレイク。私は人間だ。犬ではない。従って、私は自分の権利を要求する。私はあなた方に敬意をもった処遇を求める。私、ダニエル・ブレイクは一市民である。それ以上でもそれ以下でもない

社会派の巨匠と言われるケン・ローチ監督の強い怒りをこのメッセージから私は感じました。 これで私はケン・ローチ監督(現在83歳)の作品として年代順に次の5本を観たことになりますが 何れも傑作で見応えがありました。

 ・麦の穂をゆらす風  The Wind That Shakes the Barley (2006年)
 ・この自由な世界で  It's a Free World(2007年)
 ・天使の分け前  The Angels' Share (2012年)
 ・わたしは、ダニエル・ブレイク  I, Daniel Blake(2016年)
 ・家族を想うとき  Sorry We Missed You(2019年) 上映中

ほとんどの作品において 格差社会の中で将来に希望を持てないまま貧困に苦しむ人たちを描いており 似た内容になっています。 社会的に弱い立場の人たちが過酷な労働環境に置かれていながら救いがなく理不尽な状況に置かれていることを知り 私は暗たんとした気持ちになりました。 これから先も悲劇や不条理が続いても それが現実だということをケン・ローチ監督はどの作品でも描いていますが 「天使の分け前」は例外で ハッピーエンドになっています。 

2006年のカンヌ国際映画祭でパルドール賞を得た「麦の穂を揺らす風」は 1919~1921年のアイルランド独立戦争を描いた映画で 北アイルランドとアイルランドが分離されその後の内戦に繋がる背景を良く理解できます。 英国のEU離脱(ブレグジット)で最も問題となったのは 国境線で南北に分離された独立国アイルランドと英国の一部である北アイルランドの関税と入国手続きをどうするのかという点ですが その歴史的背景を理解する上で必見に値する映画です。

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