米紙の報じた「トヨタ創業家と歴代社長の深まる反目」と題するトヨタの社内抗争

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米国でのリコール問題をめぐって トヨタで創業一族の豊田家と非創業家による社内抗争が起きているという記事が4月13日のザ・ウォールストリートジャーナル紙に載りました。 記事全文が The Wall Street Journal(略してWSJ)の日本語版に 「トヨタ創業家と歴代社長の深まる反目----リコール問題で激化」 というタイトルで載っていますが 興味ある方は赤字部分をクリックして英語原文そのものを読んでみてください(一定期間後に削除されているかも知れませんが)。

WSJ紙は トヨタに批判的な傾向が強い新聞なので 記事内容が正しいかどうかは良く分かりません。 写真上は WSJ紙が別記事に載せた豊田章男社長の顔写真ですが このような誤解を与えかねない(悪相の?)写真を敢えて選ぶことからも トヨタに余り好意的でない新聞であることが感じられます。

トヨタには社内に学閥や派閥による抗争がなく 象徴的な旗頭としての豊田家を求心力にして社内が結束し ここまで発展してきたので もし記事に書かれているようなことが正しいなら トヨタOBの私としては とても残念です。

記事によると「豊田章男社長と側近は、高い成長率や収益と引き換えに品質を犠牲にした非創業家の社長らによって弱体化した企業を豊田章男社長が引き継いだ」と公言していますが このような不用意な発言が社内抗争を生む直接的な原因になっているのではないでしょうか。 米国でのリコール問題は 全て非創業家の社長に責任があるとする豊田章男社長の批判は それまで副社長としてトヨタ経営の中枢にあった人の発言としてはフェアでなく卑怯なので 非創業家の歴代社長が反発し社内抗争が起きても当然だからです。

記事の最後の部分にある「豊田社長は 社内の忠誠派により構成される非公式チーム(影の経営チーム)を作っているので 情報やマネジメントが二重構造になっており マネジャーによる正式チャンネルを使った意志疎通が困難になっている」という指摘も気になります。 

豊田章男社長が殿様気分で「裸の王様」になっているのなら 誰かが諌める(鈴を付ける?)べきですが その役目を既に常勤取締役から退いた奥田碩相談役に求めるべきではなく 豊田章一郎名誉会長と張富士夫会長には期待できないなら 救いがありません。 トヨタの社長もリコール対象にすべきなのかどうか その判断を誰が責任を持って早急にするのか 見守りたく思います。

以下は WSJ日本語版記事からの抜粋です。

「トヨタ創業家と歴代社長との深まる反目―リコール問題で激化」
 【豊田(愛知県)】トヨタ自動車の品質危機が、長年社内にくすぶっていた派閥抗争を顕在化させ、なおかつ悪化させている。創業一族の豊田家と非創業家メンバーのマネジャーらが、トヨタが抱える問題をめぐって非難の応酬を続けているのだ。 舞台裏の小競り合いは、特にこの数週間で激しさを増している。創業者の孫、豊田章男社長(53)は、創業家出身でない幹部の一人を排除しようとした。トヨタの前社長で現在は副会長の渡辺捷昭氏だ。 今年1月の最初の大規模リコールからほどなくして、豊田氏は仲介者を通じて渡辺氏に対し、トヨタ本体からの離職と系列会社の経営を打診した。豊田氏からこの人事を聞いたとする、ある幹部が明らかにしたものだ。 渡辺氏はこの打診を拒んだ。

かつて報じられたことのないこうした動きは、継続中の危機を きっかけに、長く抑え込まれてきた分裂が、今や表面化しつつあることを示す劇的な一例だ。トヨタの75年の歴史で前例のない危機からの立て直しに幹部があえぐなか、内部抗争が経営分裂を招きつつある。 豊田氏と側近は、高い成長率や厚いマージンと引き換えに品質を犠牲にした非創業家メンバーの社長らによって弱体化した企業を同氏が引き継いだ、と公言している。

非創業家メンバーのマネジャーらは独自のキャンペーンを展開しており、トヨタが米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き去り世界最大の自動車メーカーになったことを賞賛された時期、成長率を重視する戦略をめぐり豊田氏が直接反論することはなかった、としている。 これらのマネジャーは、トヨタが現在、直面する問題は、品質危機というよりむしろ豊田氏の経営手腕と広報活動に関連する危機であり、豊田氏は世界企業のトップに立つ準備ができていない、と指摘する。 渡辺氏の側近の一人は、創業家のメンバーの言動について、「だいぶ前からあんなものの言い方はみっともないぞ、と(周りには)言っている」と語り、「これは世襲批判をかわすためにやっているのか。あるいは自分の存在感を出して正当化したいのか」と語気を強めた。

1995年から99年まで社長を務めた非創業家メンバーの奥田碩相談役(77)は、トヨタ車の急加速に関する問題が深刻化して以来、同僚2人に対し、「章男は辞めるべき」と述べ ている。昨年、取締役から外れた奥田氏は、現在でも長老格として影響力を誇っている。 トヨタ関連の著作の多い東京大学の藤本隆宏教授(専門は技術・生産管理)は、問題を公に指摘することはトヨタ式「カイゼン」の特徴、としながらも、名指しの非難や、攻撃の対象が容易に特定できる非難は極めて異例、と指摘している。

内部抗争のルーツは、章男氏の叔父の豊田達郎氏が病気療養のために社長を辞任した95年にさかのぼる。社長職が創業家の手を離れたのは、創立者の豊田喜一郎氏の従兄弟である豊田英二氏が67年に社長に就任した後では初めての ことだ。トヨタは95年まで市場シェアを減らし、1950年以来の赤字計上の危機に直面していた。 日本経済の低迷に加え、米国との貿易摩擦、円高などがトヨタの経営を圧迫していた。 95年以降、奥田氏を筆頭に複数の非創業家メンバーが社長に就任した。それは09年に退任した渡辺氏まで15年間続いた。 この間、トヨタの財務は改善し、世界で最も尊敬され、かつ研究される企業への変貌を遂げ歴史的な成果を挙げた。営業利益率が業界で最も高い8.6%に上昇したのだ。08年、トヨタはGMを抜いて世界最大の自動車メーカーとなった。

奥田氏は「革新」を実施する上で、創業家の役割を弱めた。奥田氏に近い幹部によると、同氏は、創業家が保有する同社株が2%にも満たないことを挙げ、創業家の支配は時代遅れの概念だと語った。 奥田氏は権勢が最も強かった頃、創業家について公に話したことがある。同氏は00年、ウォール・ストリート・ジャーナルとのイ ンタビューで、豊田家はいずれ、会社の「神社」に祭られ、われわれは年に1度敬意を払うようになるだろう、と述べた。 この時、43才でゼネラルマネジャーだった章男氏の将来について奥田氏は、縁故主義といった概念はわれわれの未来には存在しない、とし、「章男級の人材は会社にゴロゴロ転がっている」と語った。 豊田氏は当時、主流から外されていたようだった。

01年に豊田章男氏が中国事業のトップに指名された際、中国はトヨタの世界戦略においてそれほど重要な地域でなかった。その頃 会長に就任していた奥田氏は、野心があっても経験のない御曹司の育成に「雑巾がけ」の地を選択した。 しかし、豊田氏は問題のあった中国子会社を立て直し、成長の新たな道筋をつけた。同氏はその後、取締役副社長に昇格した。 一方、非創業家メンバーの幹部によれば、豊田氏は役員に登用されても、会議ではほとんど発言しなかった。会社が成長するにつれ、非創業家メンバーは豊田氏を取り合わなくなり、それほど賢くない御曹司、として扱うようになったという。

08年に渡辺氏が社長を退任する態勢に入ると、経営をめぐる創業一族と非創業家メンバーの争いは頂点に達した。奥田氏は非創業家メンバーを次期社長に据えるよう望んだ。一方、かつて社長を務めた豊田章一郎名誉会長は、息子の章男氏を社長に推した。トヨタは09年1月、章男氏が同年6月に社長に就任する、と発表した。章男氏は社長就任後、渡辺氏が発案した施策の多くを中止することが最初の仕事だと宣言し、2兆円超の営業利益を達成するとの渡辺氏の非公式目標は共有しない、と述べた。

非創業家メンバーは 豊田氏が社内で忠誠派により構成される非公式チーム「影の経営チーム」を作り 情報やマネジメントが二重構造になっているので マネジャーによる正式チャンネルを使った意志疎通が困難になっていると指摘している。


莫大な広告費をトヨタから貰いながら このようなトヨタに批判的な記事が一流紙に載るのは トヨタのメディア対応や広報活動に問題があるからではないでしょうか? 写真上の豊田章男社長のイメージを損なう傲慢不遜にも見えるような顔写真は トヨタがメディアと良い関係を保っていれば載る筈のないものです。

ともあれ トヨタの内部抗争を誰も収拾できぬまま トヨタ丸が漂流を続けるようなことにならぬよう 私は願っています。
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豊田章男社長の普段の顔。 WSJの別記事に載った上の写真と比べてみてください

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この記事へのコメント

てん
2010年05月12日 21:36
記事拝見させていただきました。WSJはつい最近に韓国・現代の車のほうがトヨタその他日本勢よりすばらしいといった趣旨の記事を書いていたと思います。WSJがなぜあそこまで、日本に厳しいのかわかりませんが、悲しいことですよね。
白象
2010年05月13日 07:43
てん様
コメントを有難うございます。 記事というのは批判的な方が読んで面白いので WSJもそうなるのでしょうが・・・

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