「スティーブ・ジョブス Ⅰ・Ⅱ」を読みポータブル音楽プレイヤーでソニーがアップルに敗けた理由を知る

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ウォルター・アイザックソン著「「スティーブ・ジョブス Ⅰ・Ⅱ」(講談社)を読みました。 この本は 死期を悟ったスティーブ・ジョブス本人が著者に執筆を依頼し40回にも及ぶ取材に応じたもので スティーブ・ジョブスの最初で最後の公式評伝とも言えるものです。

スティーブ・ジョブス(Steve Jobs、1955~2011年)が生み出した製品は 各種の業界に革命をもたらすと共に社会現象にまでなっています。 1976年に発表したAppleⅠ, 1977年に発表したAppleⅡ, 1984に発表したMacintoshはパソコンを普及させる原点となり 2001年に発表したiPodは携帯音楽プレイヤーのあり方を変え 2007年に発表したスマートフォンiPhoneは携帯電話を多機能なものに一変させ 2010年に発表したiPadはデスクトップ型パソコンやノートパソコンに代わるタブレット型パソコンとして新たな利用方法を提供しています。

この本の中で ウォークマンを発明しポータブル音楽プレーヤーの市場で絶対的な地位にあったソニーがiPodのような製品を生み出せずアップルに敗れたのは何故なのか 次のように指摘(下巻 P192)しています。

ソニーは ウォークマンでポータブル音楽プレイヤーの世界を拓いた実績もあれば すばらしいレコード会社を傘下に持ってもいる。 美しい消費者家電を作ってきた長い歴史もある。 ハードウェア ソフトウェア 機器 コンテンツ販売を統合するというジョブスの戦略に対抗するために必要なものは全てそろっているのに なぜ ソニーは(iPodのような製品を生み出すことに)失敗したのだろうか。 ひとつは AOLタイムワーナーなどと同じように部門ごとの独立採算性を採用していた点であろう。 そのような会社では 部門間の連携で相乗効果を生むのは難しい。 アップルは 半ば独立した部門の集合体という形になっていない。 ジョブスがすべての部門をコントロールしているため 全体がまとまり 損益計算書がひとつの柔軟な会社となっている。 もうひとつ ふつうの会社はそういうものだが ソニーは共食いを心配した。 デジタル化した楽曲を簡単に共有できる音楽プレイヤーと音楽サービスを作ると レコード部門の売り上げにマイナスの影響が出るのではないかと心配したのだ。 これに対してジョブスは“共食いを恐れるな”を事業の基本原則としている。 「自分で自分を食わなければ 誰かに食われるだけだからね」。 だから iPhoneを出せばiPodの売り上げが落ちるかもしれない。 iPadを出せばiMacの売り上げが落ちるかもしれないと思っても ためらわず突き進むのだ。 ポータブルオーデイオ市場最大のプレイヤーであるソニーがアップルに完敗したのは ソニーの社内抗争でエンドツーエンドのサービスを会社全体で作れなかったことにある。 

ジョブスにコントロールされた普通の会社ではないアップルと 優等生として典型的な大企業ソニーの違いがどこにあるのかを 簡潔に説明した上記の引用部分は とても面白いと思いました。

アップル社は 2011年に時価総額で世界最大の企業になっています。 アップル社の成功は 市場調査とか顧客ニーズを探ることで製品を開発するのではなく市場を創造するために「消費者が必要とする半歩先の製品」を開発したことと アップル社の哲学「ハードウェアとソフトウェアを一体化したクロズドなサービスの提供」にあると言われます。 

アップル社の強みは クロズドサービスによる完成度の高い魅力的な製品の提供にありますが マッキントッシュ専用のオペレーティングシステム(OS)しか利用できないマッキントッシュは オープンサービスを提供しハードウェアに互換性を与えたマイクロソフト社のOS(ウィンドウズ)に市場を奪われ凋落しました。 アップル社の企業哲学となっているクロズドサービスは メリットとディメリットの両面がありますが 今後 裏面にでる恐れも多分にあります。

この点について 本書の中で ステーブ・ジョブスは「ビル・ゲイツのオープンサービスは成功したが本当にすごい製品は作れなかった。長い目でみると それが問題だ」と語っています。 一方 ビル・ゲイツは「クロズドサービスも成功するということをアップルは示したが それはステーブ・ジョブスが舵を握っている間だけだ」と応酬しています。  どちらの発言も核心を突いており 面白いと思いました。

10月5日にすい臓がんで亡くなったステーブ・ジョブスを悼み 世界を変えた男として絶賛し神格化する報道が氾濫する中で  「ステーブ・ジョブスの偶像と実像」と題する10月26日付けニューズウィークの辛口記事を 私の別記事に紹介しましたので もし興味あれば併せてご覧ください。
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