福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」を読み“生命”の本質は自己複製と動的平衡と知る

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本書は、2007年5月に講談社現代新書から出版された分子生物学者・福岡伸一氏による科学エッセイで 2007年のサントリー学芸賞と2008年の新書大賞を受賞しています。 知的レベルの低い私には難し過ぎると思い 敬遠していましたが 読み終えた愚息から面白いと薦められたので 遅ればせながら読んでみました。

読んだところ 世間の評価が高いベストセラーだけあって 紛れもなく面白い本であり 著者の福岡伸一氏が何故メディアの人気者になっているのか 良く分りました。

“生命”の本質は “自己複製”にあるというのが 20世紀の生命科学が到達した結論だそうです。 そのことについて 著者は この本の中で 次のような疑問を投げかけています。

生物と無生物のあいだにある中間的な存在である“ウイルス”は 細胞にとりついて自己複製する能力(DNA)を持つので寄生虫のような生命体と言えるが 栄養を摂取せず 呼吸をせず 老廃物の排泄をせず 一切の代謝を行わず 限りなく無機質な物質に近いプラモデルのような存在で そこには生命の律動がない。 ウイルスを生物とするか無生物とするかは長らく論争の的となっており いまだに決着していない。 それはとりもなおさず生命とは何かを定義する論争でもある。 私は ウイルスを生物であるとは定義しない。 生命を“自己複製”するシステムと定義するだけでは不十分であり そこには生命の律動を生む“動的平衡”が存在しなければならない。


この本を読んで最も面白いと私が思ったのは「ウイルスは生物か無生物かという未決着の論争があり 著者はウイルスを生命の律動を感じさせないので生物と定義できない」としている点です。 生物と定義するには “自己複製”という必要条件に生命の律動を生む“動的平衡”という充分条件を満たさなければならない という著者の考え方を 私は漠然と理解できますが “動的平衡”というのはかなり難解な概念ではないでしょうか?

著者は 分子生物学者が意図的に遺伝子を欠損させたノックアウトマウスの(予想から見ると意外な)実験結果なども踏まえ 従来の生命の定義には“時間”を見落としているとして 次のようにも述べています(P271)。

機械には時間が無いが 生物の内部には常に不可逆的な時間の流れがあり その流れに沿って折りたたまれ、一度 折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。 生物とはどのようなものかと問われれば そう答えることができる。

これが「生物とは何か?」という問に対する著者の答ですが 禅問答みたいに難解ですね。 ともあれ 「生物と無生物のあいだ」にある中間的な存在であるウイルスは 必要条件である自己複製能力(遺伝子DNA)を持つが 充分条件である動的平衡を欠くので 生物とは言えないという著者の見解を とても面白いと思いました。

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この記事へのコメント

hms
2012年05月22日 10:10
ウイルスも細菌の1種と思っていました。
ウイルスといえば、インフルエンザ・エイズ・狂牛病・口蹄疫などを思い浮かべます。
ウイルスは生物ではなく、遺伝子(DNA)に影響を与える無生物の毒物?
狂牛病のウイルスは無生物だからを焼いたりしても滅菌・殺菌できないのですね、納得です。
一読者
2012年05月22日 13:58
狂牛病はウイルスなど核酸を有した病原体による病気ではなく、プリオンと呼ばれる蛋白質のみで構成された物質が原因だとする見解が主流のようです。
白象
2012年05月22日 17:33
hmsさま
一読者さま
狂牛病はウイルスかどうか私には定かでなく 一読者さまご指摘のことを初めて知りました。
JO談
2012年05月23日 06:23
福岡伸一著 「プリオン説はほんとうか?」(BLUE BACKS)も知的好奇心をかきたてられる本だと思います。
ご興味があればご一読ください。
白象
2012年05月23日 06:56
JO談さま
福岡伸一著「プリオン説はほんとうか?」を教えていただき有難うございます。 読んでみます。

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  • 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社)

    Excerpt: この本を読んだ経緯 ディドロの『ダランベールの夢』が生物学にも絡んでくる内容でした。だからそれに触発されて、積読だった『生物と無生物のあいだ』を読み始めることにしまし ... Weblog: 有沢翔治のlivedoorブログ racked: 2012-08-12 17:44